歯茎の腫れは放置しないで!虫歯の穴から膿が出てくる!?
お口のトラブル 2019.03.24歯茎から膿、虫歯で空いた穴から細菌感染
「歯科医院で歯の治療」と聞いただけで、ほとんどの人はうんざりしますよね。
筆者が幼少の頃、漁師をしている叔父が、「俺は歯医者なんか行かねえ!虫歯になったら俺がペンチで抜くんだ!」と親戚の集まりで武勇伝のように話をしていました。
歯並び、すきっ歯、歯のみぞが浅い、深い等々個人差があり虫歯になりやすい、にくいの違いは出ます。
問題は虫歯になってしまった初期の対処法次第で、後々治療にかかる労力に大差が出ます。
初期の虫歯の治療をせずにいてある日突然歯茎が腫れ、虫歯、歯茎の穴からも臭いのきつい膿が出ます。
恐らくこの症状が出る前に、物を噛むと鈍い痛み、歯が浮く等の症状が出ているはずです。
その後、歯茎が腫れ水ぶくれもでき、ドキドキと自分の心臓に合わせて痛みが出てきます。
我慢できなくなる頃には虫歯の穴から入った細菌により歯の神経は腐り、歯周病にもかかって歯茎も腫れ膿が出ます。
これらの症状を根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と言います。
歯の穴から膿が!根尖性歯周
原因が虫歯の根尖性歯周炎は、歯髄(神経)という、歯に栄養を送っている毛細血管等から構成されている部位の炎症です。
まず虫歯を除去し穴をあけ、歯根の先まで針金のようなヤスリを用いて、細菌により腐敗・炎症した神経部分を除去します。
炎症部分を消毒、除去後空いた穴に詰め物をして、細菌の侵入を防ぐ処置をします。
筆者も年に1回歯茎等の検査のため、かかりつけの歯科医院でレントゲン写真を撮りますが、前歯1本、奥歯2本に白い線が歯の根の方へ伸びているのが確認できます。
この白い線は神経が通っていた空間に詰めた跡ですね。
1本の治療につき3回診療に通いましたので、歯根治療完治まで3ヵ月程かかりました。
その後、差し歯、被せ物の処置に1~2ヵ月を要します。
神経はないので痛みはありませんが、細い金属のヤスリを歯根の先まで入れ、グリグリと細菌に侵された組織、膿の除去作業は気持ちのいいものではありませんでした。
細菌に感染した歯髄の除去治療は、感染根管治療と呼ばれています。
感染根管治療をしても経過が良くない場合は、抜歯、外科的手術で歯根の先を除去する事も必要になります。
神経除去後の歯根に膿が溜まる!歯根嚢胞
前項で触れましたが、虫歯で神経を抜く治療をした方も多数いらっしゃると思います
診療台の上で口を開けたまま、歯根の奥へまっすぐ穴をあけ、針金のようなヤスリで何度も奥に向かってぐりぐりと掃除します。
歯茎も痛み、かなりの苦痛を伴う処置です。
これからご紹介する歯根嚢胞(しこんのうほう)は、こんな思いをした後の神経が死んでいる歯や、以前神経を抜き治療が完了している歯に診られる症状です。
生きている歯には起こりません。
歯の内部の神経が入っていた空間が汚れて細菌が繁殖し、根の先端の穴から押し出され、膿が溜まっている状態が歯根嚢胞です。
治療法は虫歯治療の神経を抜く治療法と同じですが、被せ物や詰め物を取り除いて膿が溜まった袋から膿を取り除きます。
膿袋を取り除いた後、徹底した滅菌をするため根気よく内部の清掃、消毒を実施して細菌が入らないよう詰め物で塞ぎます。
歯根嚢胞は症状が軽い(膿疱が小さい)と完治しますが、膿の袋を取り除くため抜歯、骨の一部を削る手術が必要になる事もあります。
治療は長期間になり、数ヵ月歯科医院に通うこともあります。
歯茎からの膿!歯周病菌で命の危機?
歯茎の病で代表的な歯周病(歯槽膿漏)ですが、この細菌は歯周病菌と呼ばれます
歯周病菌は歯槽膿漏を誘引し、歯茎、虫歯の穴から膿が出る症状を引き起こします。
この歯周病菌が他の病気に関しても悪影響を及ぼす事をご存知でしょうか。
歯周病菌は歯茎の毛細血管から体に入り込み血栓を作りやすくします。
血栓が脳内にできれば脳梗塞、心臓にできれば心筋梗塞の要因になります。
唾液、呼吸でも肺に入り込みますので、体の免疫力が落ちていると肺炎を起こす要因にもなります。
この場合は、誤嚥性肺炎です。
呼吸器系・心臓・血管系の疾患を持っている患者さんには非常にリスクになる細菌です。
また、糖尿病においてはインシュリンの働きを抑え込む働きをします。
血糖値コントロールに影響を与えますので、糖尿病の悪化が懸念されます。
歯周病菌は妊婦さんにも影響を与え、陣痛を促進する働きがあり、早産、低体重出産を誘因する事もあるようです。
歯周病になると、歯周病菌が歯茎、歯だけでなく体の健康維持にも悪影響を及ぼします。
歯磨き、ブラッシング等ほんの少しの手間を惜しんでいると、命の危機にまで発展する可能性は否定できません。
高血圧・降圧剤による歯茎トラブル
働き盛りの年代になり管理職等要職に就き、仕事のストレス、家庭では子供の進学問題等で体調を崩し高血圧治療薬を服用されている方も多いでしょう。
高血圧治療薬の降圧剤を服用されている方に、歯肉、歯茎で気になる症状がありますのでご紹介します。
主に歯茎、歯肉のトラブルというと腫れ、穴が開いて膿が出るなどが主な症状ですが、高血圧の降圧剤服用により副作用が出ることもあります。
病名は「薬物性歯肉増殖」と呼ばれ、カルシウム拮抗薬を使用している降圧剤を服用することで発症する事があります。
歯と歯の間の歯肉が腫れ、歯が完全に隠れる程に腫れあがって歯が見えなくなることもあります。
服用する降圧剤の種類変更ができればいいのですが、症状により薬を調合しているので難しいことが多いですね。
この歯肉肥大について歯垢(プラーク)が歯面に多く存在すると重篤化することが判明しています。
そこで、日頃の正しいブラッシングにより歯垢を取り除き、定期的な歯科検診で歯石の除去を実施する事が大切です。
歯茎の傷口・穴から膿が!歯肉膿瘍
これからご紹介する歯肉膿瘍(しにくのうよう)は、歯茎、歯肉の病気でもレアなケースになります。
秋、冬の季節鍋料理には欠かせないエビ、カニをおいしさの余り急いで口に入れ、思わず硬いカニの殻が歯肉にあたり痛い思いをする事がありますよね。
また、脂ののった焼きサンマの小骨が歯茎に入り、歯肉の表面に傷が付いたりすると、傷ついた表面から細菌感染で発症します。
歯磨きのブラッシング、歯科医院での処置中に歯茎、歯肉表面についた傷からも細菌が感染し発症します。
歯肉の縁、歯と歯の間の歯肉(歯間乳頭)が腫れ、指で触るとぶよぶよとして、腫れた歯肉の真ん中に穴があき膿が出ることもあります。
腫れた歯肉、歯茎に硬い殻、魚の小骨があれば除去し、膿を出して消毒します。
重い症状になると周囲の歯肉、歯まで痛くなります。
歯垢が原因の歯周病と間違えそうな症状ですので、異物感があれば診てもらいましょう。
さまざまな口腔内トラブルは基本ケアで予防
聞き慣れない病名、症状を幾つかご紹介しました。
外傷、服薬の副作用等による発症等、特異な症状を初めて認識された方も多くいらっしゃると思います。
しかし、聞き慣れない病名を怖がることはありません。
外傷、服薬の特殊な症状を除けば、歯垢(プラーク)、歯石が付かないようにする事が口腔内トラブルに対する有効な予防になります。
日頃から丁寧なブラッシング、定期的な歯科医院での歯垢除去等を心がけ、健康な口腔と体を維持していきましょう。