歯茎の退縮、歯の根元が長くなったら痛い・沁みるのは何故?

お口のトラブル 2019.04.25

年齢を重ね口腔のケアが十分でないと歯茎が下がり、歯の根元の象牙質が露出、冷たい飲み物を飲むと歯茎の根元が沁みて痛みを感じます。

TVコマーシャルでもよく見かける、知覚過敏と呼ばれる症状ですね。

「どうせ知覚過敏でしょ」と見過ごして受診を怠っていますと、寒い季節になり寒さが身に沁みる頃、歯にも寒さが沁みるようになります。

この記事では、なぜ歯茎が退縮し歯の根元が現れて痛みが生じるのか探っていきます。

歯や歯茎が痛い!2種類の痛み

歯科の二大疾病は虫歯、歯周病と言われています。

筆者が子供の頃、歯医者=虫歯治療のイメージでした。

現在の医療器具と違い歯を削る音も大きくて、子供の頃はガリガリと削られている感じでした。

最近、歯科医院へ通院する目的も多様化し歯を白くする、歯並びを直す(歯列矯正)、口臭が強い等の悩みで、来院する方も増えています。

そんな現代でも痛い歯、歯茎に関する問題は深刻で重要になります。

その歯、歯茎の痛みには2種類ある事をご存知でしたか?

「自発痛」、「誘発痛」と呼ばれる2つの痛みについてご紹介していきます。

まず自発痛ですが、激痛から少しの違和感まで痛みの感じ方は多種多様の痛みです。

自発痛はじっと身じろぎせずにいても、心臓の鼓動に合わせてズキズキと歯の根元も痛みます。

次に誘発痛ですが「咬合痛」、「打診痛」、「冷温熱痛」、「擦過痛」等の種類があります。

誘発痛は、噛みしめる、叩く、冷たい・熱い物、擦れる等、歯や歯茎等に刺激を与えた時に痛みを感じます。

強烈な自発痛がある時は誘発痛も併発している事がありますので、どこの歯が痛いのか患者さん自身ではわからなくなります。

そんな痛みの時は、迷わずかかりつけの歯科医院を受診してくださいね。

歯茎が退縮すると痛いのはなぜ?根元の象牙質が関係

自発痛、誘発痛にしても痛みがひどいと生活習慣に影響を及ぼし、また誘発痛は自発痛の前触れの場合があります。

誘発痛の「咬合痛」(噛みしめる)、「打診痛」(叩く)は症状が長く続くようでしたら注意が必要です。

それは、以前受けた根管治療の不具合等により、根元部分に炎症を起こしている場合があるからです。

自発痛の「冷温熱痛」、「擦過痛」は、歯の敏感な部分が露出してそこに刺激を受けて痛い思いをします。

歯茎が退縮すると、刺激に弱い歯の根元の象牙質が冷温熱痛を敏感に感じるようになります。

刺激に強い硬いエナメル質は歯茎との境目から下にはありませんから、刺激に弱い象牙質の中を通る歯の神経は、冷温熱痛に敏感になります。

歯茎の退縮する原因は歯周病に侵される、また、誤った歯ブラシの使用方法で歯の表面のエナメル質を削ってしまった等です。

象牙質が露出した箇所を特定し、覆い隠す処置をすれば痛みも改善しますが、重い症状で神経部分まで侵されている場合神経除去をする事になります。

予防には、まず正しいブラッシングを覚え、最低でも就寝前は必ず歯磨きを実施し、大切な歯のエナメル質を削らないようにしましょう。

歯茎や歯の根元が痛い!虫歯からくる歯髄炎かも

口腔内に起こるトラブルには三つの大きな症状があります。

まずその一つ目が「歯髄炎」です。

通常、歯の中には歯の神経(歯髄)が通っていて、血液が循環し歯や歯茎は健康な状態を保っています。

しかし、歯が欠ける、虫歯等によりエナメル質、象牙質が壊されると歯髄が細菌に感染し炎症を起こします。

これが「歯髄炎」と言われ、日常生活に支障を来たすほどの激痛を伴う症状が出るのです。

激痛が起きてしまうと歯の根元まである神経を、細い針金状のヤスリで歯髄をきれいに除去、消毒する処置を行い空いた空間に詰め物で雑菌の侵入を防ぐ処置をします。

歯髄炎になる前には前兆として知覚過敏(誘発痛「冷温熱痛」)の症状があります。

熱い、冷たい物が歯に沁みた時、速やかにかかりつけ歯科医院で受診、治療しておく事により神経を抜く処置をしなくて済む事もあります。

エナメル質自体、本来丈夫な物質です。

予防には硬い歯ブラシでエナメル質の部分を強い力でゴシゴシ磨いたりせず、丁寧で正しいブラッシングを心がけてください。

抜歯後に痛みが続く!?根元に違和感があるときは根尖性歯周炎を疑う

二つ目に「根尖性歯周炎」ですが、虫歯等で神経を抜く処置をした歯に発症します。

歯の根元に炎症を起こし、膿が溜まり根の周辺の歯茎などが痛いなどの違和感が出てきます。

細菌感染した神経を抜く治療をして消毒をしっかりしても、多少の細菌は残っている事があるのです。

普段、身体が健康な時は免疫力で細菌の活動は抑えられている状態です。

それが、仕事疲れ、ストレスや体調不良による免疫力の低下をきっかけに細菌が活発化してきます。

活発化した細菌により歯の根元に膿が溜まって、周囲の組織が押され歯茎もプクッと腫れ激痛が走ります。

夜も眠れぬほど痛いと表現しますが、まさに自分の心臓の鼓動に合わせるようにズキン、ズキンと脈を打つ痛みは苦痛以外表現の仕様がありません。

歯髄炎の時の治療と同じように歯の上から根元に向かい穴をあけ、膿を出し掃除、消毒により症状改善に努めます。

根尖性歯周炎の予防にはかかりつけの歯科医院で定期的に口腔内のケアを受けてください。

そして専門医の目線でチェックしてもらい、早期発見、早期治療する事がベストな対処法になります。

歯茎が痛むのは正常ではない!アラサー過ぎたら辺縁性歯周炎に注意

三つ目の「辺縁性歯周炎」とは自覚症状がなく、多くはアラサー世代超えほとんどの男女に見られる歯茎の病気です。

歯周病の症状がない方も、毎日のケアにより微妙なバランンスで歯周病菌の増殖を抑えているわけですね。

ですから普段の口腔内ケアを疎かにすると歯茎の周囲に歯垢が溜まり、あっという間に歯周病菌にとって快適な環境になってしまいます。

そして、活発になった歯周病菌により炎症を起こした痛い歯茎、深くなった歯周ポケットは歯周病菌の快適な住みかになり膿、歯をぐらつかせる等の症状が出てきます。

辺縁性歯周炎の治療は歯茎を切開し膿の排出、除去と消毒を行いますので、術後は個人差もありますが、食生活に影響が出る事があります。

また、薬の服用(抗生物質)により炎症を抑え、歯周病菌の減少を図りますが、歯周病の症状が重い場合歯を抜くことになってしまいます

歯周病以外で歯茎がプクッと腫れる原因は、外的の力により歯の根元が割れたりする事があるので、自己診断せず受診をお勧めします。

歯や歯茎が痛い!けど場所がわからない?

患者さんは左上奥歯の歯茎が痛いと訴えていたが、実際検査してみると左下奥歯の根元に膿が溜まって炎症を起こしていた事が原因だった。

このように、痛みの場所を錯覚、本来の痛みの原因から離れた場所に痛みが出てしまう事を「関連痛」と言います。

もちろん、原因の歯を特定し治療すると痛みは治まりますが、その他歯が原因でない「関連痛」もありますのでご紹介します。

それは、物を噛む筋肉、咀嚼筋(そしゃくきん)や首の筋肉、側頭筋の痛みを、歯の痛みと錯覚してしまうのです。

原因は長時間の緊張(パソコン作業)、歯ぎしり、長時間ガムを噛む等無意識の癖による筋肉痛です。

予防するには、まず自分が無意識にしている癖を客観的にとらえ、強く噛む癖のある方は意識的に軽く咀嚼し、歯ぎしりする方は予防にマウスピースをつけて就寝します。

このように各原因による筋肉の緊張を和らげ、筋肉にかかる負担を軽減していく事が症状の緩和、予防につながります。

本来の痛みの場所と違う場所を痛いと感じる人間の体は不思議ですが、きちんと原因を把握、治療しないと長期に渡り見当違いの痛みで悩む事になってしまいます。

痛み知らずの歯になる近道

痛い歯、歯茎には原因、症状がそれぞれありました。

一度でも歯、歯茎の痛みを経験した方は二度としたくないと思いながら、予防するための基本が出来ておらず再発する方がいます。

口内のケアは習慣づけた歯磨き、ブラッシング、フロス等の使い分けが出来ないと歯周病の発端となる歯肉炎を発症させてしまうのです。

もう二度と痛みを経験したくない方、健康な歯、歯茎を得るために毎日の地道な口腔のケアが一番の近道になります。

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