高齢者だからこそ大切なオーラルケア!効果的なケアとやり方

虫歯予防 2019.09.15

高齢者が増加する日本社会において、オーラルケアの徹底は決して無視できない課題です。

と言うのも、体力が落ちて抵抗力が衰えている方にとって、口腔内の細菌は命に関わる程の大敵だからです。

そのため、自力で口腔環境のケアができない高齢者に代わり、介護者は効果的なオーラルケアをすることが求められます。

この記事では、高齢者の口腔内の特徴から、オーラルケアのやり方やプロに頼った訪問歯科についてご説明していきます。

高齢者の口腔内の特徴を知る!オーラルケアの必要性

介助や介護を必要とする高齢者は、体の様々な機能が衰えることが原因で、自力での生活が困難です。

日常生活における様々なサポートを介護者が行わなければなりませんが、オーラルケアもその一つです。

オーラルケアとは、口腔内を健康に保つためのケアで、歯磨きやデンタルフロスなどの補助道具で口腔内を清潔に保ちます。

要介護高齢者に焦点をあてた場合、オーラルケアは衰えた口腔機能と口腔内環境の健康維持を目的に行われます。

では、要介護高齢者に対するオーラルケアの効果ややり方を知るために、まずは高齢者の口腔内の特徴を見ていきましょう。

高齢者の口腔内の特徴としては、唾液の分泌量が少ないことが挙げられます。

もともと唾液には抗菌・自浄作用があり、歯や舌の表面を細菌や汚れから守る役割を果たしています。

しかし、唾液の分泌量が少ない高齢者の場合、その分、細菌が活発に動きやすく、虫歯や歯周病になりやすい傾向があります。

また、特に入れ歯を使用している場合は、入れ歯との隙間に食べカスが溜まりやすくなり、細菌が増殖する絶好の温床になる場合があります。

さらに、食事を流動食に頼っている方は、噛む力の低下によってますます唾液の分泌量が減少してしまいます。

このように、高齢者の口腔内は、細菌や汚れに対して大変無防備な状態になっているということを、しっかり理解しておきましょう。

高齢者に対するオーラルケアの効果とは?

介助・介護を必要とする高齢者へのオーラルケアは、ただ口腔内の健康を維持するためのものではなく、体全体に様々な改善効果を期待することができます。

では、オーラルケアをすることで具体的にどのような効果が得られるのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

・唾液の分泌を促進

ただでさえ唾液が出づらい高齢者にとって、口腔内を不衛生にしておくことは、さらに唾液の分泌量低下を助長します。

そのため、口腔内を清潔に維持することができれば、唾液が出やすい口腔環境にすることが望めます。

また、歯ブラシなどを使用したオーラルケアは、唾液腺の刺激に繋がり、唾液の分泌を促進する効果もあります。

・呼吸器の感染症、炎症を防ぐ

口腔内の汚れは、咽頭から呼吸器に悪影響を及ぼし、ひいては体全体に感染症を引き起こす恐れもあります。

また、嚥下機能が低下している高齢者の場合、食べ物や唾液が誤って気管に入ることがありますが、口腔内が汚れていると、その細菌が肺に入って炎症を引き起こすケースもあります。

オーラルケアがしっかりできれば、感染症などの罹患は防ぐことができるでしょう。

・口腔機能の改善に繋がる

口腔内を清潔に保つことは、歯の健康を通して、噛んだり、飲み込んだり、呼吸をしたり、話したりなど、口腔機能の様々な部分を活発にすることに繋がります。

口腔機能を改善することができれば、必然的に体全体の健康にも導くことができるでしょう。

上記以外にも、オーラルケアには多くのメリットがあり、これが推奨されている理由でもあります。

では、次項から要介助・介護高齢者に対するオーラルケアのやり方について見ていきましょう。

オーラルケアのポイントと注意点!やり方を知る前の準備と把握

実際に介助・介護者がオーラルケアをしていく上では、どのようなことをポイントに行えば良いのか、戸惑う方も多いのではないでしょうか。

オーラルケアのやり方を見ていく前に、まずは、押さえておきたいポイントや注意点をご紹介しましょう。

・最小限のサポート

介助、介護はあくまでも高齢者の自立をサポートするためのものです。

また、歯磨きをする動作は、手指や口腔機能を動かすリハビリにもなるため、できる限りのことは本人にやってもらうのが望ましいでしょう。

ただし、歯磨き後は必ず磨き残しがないかチェックし、必要であれば仕上げ磨きをすることがポイントです。

・誤嚥防止の体勢で行う

オーラルケアをすると唾液の分泌が促進されるため、姿勢によっては誤嚥を引き起こす可能性があります。

起き上がっている状態であれば顎をしっかり引いてもらい、誤嚥防止に努めます。

高齢者が寝たきりの場合は、顔を横に向け、枕を使って顎を引くと良いでしょう。

・口腔内の状態をチェックする

オーラルケアをする際は、虫歯や出血、腫れ、口臭、舌苔などの状態を確認することで、口腔トラブルの早期治療に繋げることができます。

介助・介護におけるオーラルケアのやり方

前項でお話ししたオーラルケアのポイントを踏まえながら、実際に介助・介護で必要なオーラルケアのやり方について詳しく見ていきましょう。

【準備するもの】

・歯ブラシ:一般的な歯ブラシ以外にも、効率の良い電動歯ブラシもおすすめ
・歯間ブラシ、デンタルフロス:歯ブラシ後の取り切れない汚れを除去する
・舌ブラシ:舌苔を除去する
・バイトブロック:開口器
・うがい受け

【歯磨きのやり方】

①頭部を30~45度に前屈させ、誤嚥しにくくなる体勢をつくる

②入れ歯を使用している場合は口内から外し、残った歯を磨いていく

③歯ブラシが歯の面に対して垂直になるようにあて、ブラッシングする

④汚れが溜まりやすい奥歯の歯と歯茎には、斜め45度に歯ブラシをあてて磨いていく

この際、ゴシゴシと力を入れすぎないように、軽快にブラッシングしていきましょう。

⑤磨き終えたら口に水を含ませ、まんべんなくうがいをする

また、寝たきりや重度の障害がある場合、オーラルケアに際して誤嚥の可能性が高くなります。

そこで、歯ブラシの代わりに殺菌ガーゼを指に巻き付けて汚れを除去したり、綿棒やスポンジブラシ、ウェットティッシュなどを使って口腔清拭をしていくと良いでしょう。

清掃視野の確保がうまくできない場合は、バイトブロックなどの開口器使うことをおすすめで、清掃視野を確保すると同時に、咬合による口内損傷の防止にも役立ちます。

なお、口腔清拭をする際は、必ず使い捨ての手袋を装着して行いましょう。

入れ歯と舌のお手入れもオーラルケアの基本!やり方とポイント

次に、オーラルケアでも大切になる入れ歯・舌のお手入れのやり方について見ていきましょう。

まず、入れ歯は歯と同じように歯垢が付着するため、お手入れを怠ると口臭や口内炎、歯周病の原因になりかねません。

そのため、毎食後は必ず入れ歯の掃除を忘れないようにしてください。

【入れ歯のお手入れ方法】

①入れ歯に付着したぬめり汚れを流水で流す

②義歯ブラシを使って丁寧に磨いていく

また、就寝前は義歯洗浄剤に浸漬させることで細菌の繁殖を防ぎます。

1日1回は義歯洗浄剤を使用し、口腔内で入れ歯を清潔に保てるように心がけましょう。

そして、次に見ていくのが舌の表面に付着した舌苔のケアです。

舌苔は食べカスや歯垢、細菌などの塊で、放置すると口臭トラブルに繋がります。

【舌苔ケアのやり方】

①嘔吐反射を防ぐため、舌を思い切り前に突き出してもらう

②舌の奥から手前に向かって掻き出すように引く

ただし、舌表面の組織は繊細なため、磨きすぎると味覚障害などのトラブルを引き起こす恐れがあります。

そのため、頻度は1日1回、力加減に注意して磨くようにしてください。

プロフェッショナルケアによる訪問歯科のススメ

これまでに、介助・介護を必要とする高齢者のための、オーラルケアのやり方を詳しくお話ししてきました。

さらに、オーラルケアを行っていく上では、介助・介護者が行う「セルフケア」に加えて、「プロフェッショナルケア」も重要になってきます。

「プロフェッショナルケア」とは、歯科医師や歯科衛生士などの専門的なケアや指導を受けることを指します。

在宅介護の中でも、特に寝たきりや重度の障害がある高齢者ほどオーラルケアはしづらく、必然的に口腔トラブルも付き物になってきます。

しかし、治療が必要になった場合もそうですが、歯科医院に通院する手間やそれに伴う負担を考えると、なかなか受診することが難しいと言えます。

そこで、おすすめなのが「訪問歯科」です。

「訪問歯科」とは、歯科医師や歯科衛生士が専用機材を持参し、通院困難な高齢者を診療するもので、多くの歯科医院ではこのような往診にも対応しています。

通院にかかる診療費よりも割高になりますが、通院せずに治療やオーラルケアのアドバイスを直接受けられるため、ぜひ依頼することをおすすめします。

医院によっても流れや支払い方法が異なりますので、まずはそれぞれで問い合わせると良いでしょう。

オーラルケアは心身の健康に

介助・介護者にとって、他人の口腔内を清掃することはなかなか難しく、始めのうちはうまくいかないこともあるでしょう。

しかし、体の機能が衰えた高齢者にとって、口腔環境を清潔に保つことは、食べる楽しみから生きる活力に繋がります。

行き詰ったときは、訪問歯科を利用するなど、プロによるアドバイスや診療を受けることをおすすめします。

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