上唇の裏側から前歯の中央にある筋が切れた!どう対処する?
お口のトラブル 2019.05.21上唇の裏側から前歯の中央にある筋は切れたりしても大丈夫?
上唇を指でめくったときに、上唇の裏側から前歯の中央に、筋のような、ひだのようなものが張っています。
この筋を「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」といいます。
大人の場合は、この上唇の裏側から前歯の中央にある筋について、普段全く気にしていないでしょう。
子どもの場合は、乳幼児期に転倒したりなにかにぶつかったりして、この筋が切れたりすることがよくあるため、この上唇小帯に気づくことが多いのです。
口の中は、少し切れただけでも多量に出血する場所です。
そのため、子どもの口から多量に出血し、前歯の筋が切れているのを発見すると、ひどく慌ててしまいます。
ただ、口の中の傷は案外早く塞がります。
仮に子どもの上唇小帯が切れて出血がひどくても、まずは慌てず、清潔なガーゼなどで押さえて止血しましょう。
出血が治まったら、傷の大きさや深さを見て、心配ならば歯科か口腔歯科に問い合わせてみてください。
傷も小さく、しばらくして出血が止まったようでしたら、あまり心配しなくても経過観察で大丈夫でしょう。
上唇の裏側から前歯の中央にある筋は切れた方が良いってホント?
少しの衝撃で切れることが多く、また切れたらかなり出血する上唇小帯ですが、日常生活を送っているうちに自然に切れたほうが、むしろ運が良いとも言われています。
その理由は、筋が前歯のすぐ近くの位置まできていたり、前歯と前歯の間に入り込んでいる場合、いくつか懸念されることがあるからです。
子どもの一歳半健診や三歳児健診のときに、医師は子どもの上唇をめくり、上唇小帯を診ています。
乳幼児期には前歯のすぐ近くの位置まで筋がきていたり、前歯と前歯の間に入り込んでいることは、実はよくあることです。
さらにこの筋の太さが、普通より厚いこともあります。
そのような場合、乳児であればお乳が飲み辛かったり、飲み方が通常と違ったりします。
幼児であれば、言葉が話し辛くなることも。
大抵の場合は子どもの成長に従って、前歯のすぐ近くの位置まできていた筋は歯から離れて短くなります。
また、日常のケガにより自然に切れることも多いので、上唇小帯に異常があると言われても、経過観察になることが多いです。
しかし子どもが成長しても、上唇小帯の位置や長さに変化がない場合は、医師から手術を勧められることもあります。
前歯のすぐ近くの位置まで筋がきているデメリットは?
大抵の場合、子どもが成長するに従い前歯の筋は歯から離れて短くなったり、自然と切れたりしますが、成長しても上唇小帯が切れなかったり短くならないこともあります。
子どもの頃から前歯のすぐ近くの位置まで筋がきていても気づかなかったり、歯科医師に何も言われたことがないために、大人になってから悩んでいる人も多くいます。
上唇小帯が前歯のすぐ近くの位置まできていたり、前歯と前歯の間に入りこんでいると、次のようなデメリットがあります。
・前歯を磨くと痛いので嫌がる
・虫歯になりやすい
・前歯がすきっ歯になりやすい
・笑うと歯茎しか見えず、笑顔になれない
これらのデメリットがあるため、前歯が生え変わるタイミングの5~12歳頃に、上唇小帯を手術で切除する人が多いようです。
ではどうしてこのようなデメリットになるのか、一つ一つ詳しく見ていきましょう。
前歯の近くの位置まで筋がきていると歯磨きが難しい?
幼い子どもの歯磨きは、仕上げ磨きを含めて親がしてあげることが多いと思います。
そのときに、上唇の裏側から前歯の中央にある筋に歯ブラシが触れると、とても痛いのか子どもは歯磨きを嫌がるのです。
この筋が最初から短い場合、もしくは切れた場合は、中心の前歯2本を上から下にブラッシングしたり、左から右に磨いていくなど順序立てて歯を磨いていきます。
しかし、前歯の近くの位置まで筋がきている場合は、歯ブラシに筋が触れないように極力注意しなくてはいけません。
例えば、左から磨いて真ん中で止めて、今度は右から磨いていくなど、筋に触れないように途中で方向を変えなければなりません。
また、歯ブラシが前歯の筋に触れないように、筋を指でカバーして磨いてあげなければいけません。
うっかり筋に歯ブラシが触れてしまうと、とても痛いので、歯磨き=痛いものと思い込み、歯磨きが嫌いになってしまいます。
歯磨きが嫌いになると、当然虫歯になりやすくなります。
筋が切れただけではすきっ歯は治らない?
上唇小帯が長いことによって、次に心配されることは、前歯のすきっ歯です。
上唇小帯が長くても、筋が前歯の間に入り込んでいない場合は問題ありません。
すきっ歯でも顎のスペースがある程度あり、前歯が扇状に広がって生えている場合は、犬歯が生える時に埋まっていきます。
また、前歯がすきっ歯でも、隣に次々と永久歯が生えてくると歯が押されて、自然に前歯がくっついていきます。
しかし同じすきっ歯でも、前歯の間に筋が入り込んでいて、特にその筋が太い場合は、高い確率で前歯がすきっ歯になります。
前歯の間に筋が入り込んでいると、隣に次々と永久歯が生えてきて前歯を押しても、筋が邪魔をして前歯はくっつきません。
矯正するにしても、筋が邪魔をして前歯はくっつきません。
このため、前歯の間に筋が入り込んでしまっている場合は、歯が永久歯に生え変わるタイミングで歯科医師から筋の切除を勧められ、手術を受ける人が多いようです。
小さい時にケガをして筋がキレイに切れたから手術をしなくて済んだ、という人もいますが、前歯の間に入り込んでいる筋は手術でしか取り除けないようです。
前歯の間の筋を手術で切除する方法は?
前歯の筋を切除する手術方法は2通りあります。
・メスやハサミを使い、筋が切れた後に縫合する方法
切除だけの時間でいうと一瞬です。
その後縫合し、痛み止めが処方されます。
術後の経過にもよりますが、1週間ほどで終了します。
・レーザーを使う手術
局部に麻酔をして、レーザーで上唇小帯を切除する方法です。
全体の手術時間は15~20分程度かかります。
メスやハサミを使う手術と比べると、痛みも少ないようです。
手術終了後、痛み止めが処方されます。
いずれの場合も総合病院などの口腔外科での手術になりますが、手術後1週間で、前歯のすきっ歯が殆ど閉じることもあるようです。
上唇小帯の手術は、口腔外科では簡単な手術に分類されるので、手術を受ける側としては、安心して受けられます。
気になる上唇小帯の手術にかかる費用ですが、保険適用内となり、約5,000円かかります。
お住まいの地域によっては、小児手術にかかる自己負担額を一部または全額助成となる場合がありますので、事前に問い合わせてみましょう。
上唇の裏側から前歯の中央にある筋は自然に切れるのが望ましい
転んだりぶつかったりすることが多い幼少期に、上唇の裏側から前歯の中央にある筋である上唇小帯が切れたりすることは、よくあることです。
血が止まらない場合や、傷口が大きい場合は、病院で縫合してもらう必要がありますが、筋が前歯の近くの位置まできていたり、前歯の間に入り込んでいる場合は、逆に病院で切除した方が良いときもあります。
これを機会に子どもやご自身の上唇小帯を確認してみてはいかがでしょうか。