高齢者の介助歯磨きはどう行う?嫌がる口腔ケアのポイント

歯磨き 2020.03.30
自宅で高齢者の介護をしていると、介助歯磨きを嫌がる方もいることでしょう。 なかなか口を開けてくれなかったり、噛みつこうとしてきたりなど、介護者が必死になればなるほど嫌がられてしまって困ってしまいますよね。 高齢者にとって、口腔ケアは身体の健康に関わるからこそ、焦らずに一度立ち止まって考えることが大切です。 この記事では、高齢者が歯磨きを嫌がる理由から介助歯磨きのポイントまで詳しくお話ししていきます。

高齢者における歯磨きの重要性

私たちが習慣とする口腔ケアは、歯磨きで口内を清潔に保つことで、虫歯や歯周トラブルを予防する目的があります。

しかし、体の機能が低下する高齢者の場合、歯磨きは虫歯や歯周トラブルを予防するだけでなく、連鎖的に起こりうる肺機能の障害を防ぐなど、生命を守るための大切な口腔ケアだと認識するべきです。

高齢社会に直面し、要介護者が増加する近年において、このような口腔ケアは高齢者が健康に生活していくための重要な課題と言えるでしょう。

要介護者の口腔ケアには、「プロフェッショナルケア」と「セルフケア」の2種類があります。

まず、プロフェッショナルケアとは、歯科医師や歯科衛生士などによるケアで、汚れの除去に加えて口腔機能の状態や食生活に関するアドバイスをしてくれます。

一方、今回お話ししていくセルフケアは、歯ブラシやデンタルフロスなどを使って、高齢者の介助磨きを行うケアです。

高齢者の多くは、誰かに歯磨きされることを強く嫌がる傾向にありますが、中でも、認知機能の低下が認められる高齢者はそれが顕著です。

高齢者が歯磨きを嫌がる理由は?まずは理由を知る

歯磨きされることを嫌がる高齢者に対し、無理やり歯磨きをするわけにもいきません。

とは言え、歯磨きをしないでいれば、虫歯や歯周トラブルだけでなく、身体の健康にまで影響が及ぶ恐れがあります。

まずは、なぜ歯磨きを嫌がるのか、その理由を知って原因を取り除く必要があります。

高齢者が歯磨きされることを嫌がる理由としては、主に3つあります。

①口の中の異物感にびっくりする

認知機能に低下がある場合、得体の知れない異物が入ってくることに恐怖を覚えるものです。

特に、口の中はデリケートなため、異物に対して極端な抵抗を示します。

②歯磨きが痛い

歯磨きをする側は、早く仕上げようと必死のあまり、無意識のうちに強い力で磨いている場合があります。

また、嫌がるのを押さえつけて頑固に歯磨きをするなど、痛みや恐怖を与えていないか、改めて歯磨きのやり方を見つめ直してみる必要があります。

高齢者の気持ちに寄り添い、配慮しながら歯磨きをしていくことが大切です。

歯磨きは必ず本人の了承を得てから

高齢者に嫌がる歯磨きをさせてもらうには、第一として「本人の了承を得る」ことが基本です。

前述したように、口の中は特にデリケートゾーンです。

家族同士であっても、いきなり触ったり無理やり歯ブラシを入れようとしたりすれば、その後の歯磨きも困難になり、悪循環に陥ります。

まずは、口腔ケアについてしっかり説明し、「歯磨きですっきりきれいにしよう」「一緒に歯磨きをしよう」などの声掛けをするなど、本人とのコミュニケーションを図ったうえで歯磨きに入っていきます。

特に、認知機能が低下している高齢者の場合は、極度の拒否反応を示すため、念入りに声を掛けてリラックスしてもらうことから始めましょう。

事前の声掛けでは、口内に痛みなどの気になることや悩みがないかを聞き、高齢者の不安をできるだけ和らげます。

「歯磨き=気持ちの良いもの」という認識を持ってもらえるように、徐々にゆっくり進めていきましょう。

ただし、それでも歯磨きを嫌がる場合は、かかりつけの歯科医院に相談してみることをおすすめします。

嫌がる高齢者の歯磨きをスムーズに行うポイント

本人の了承を得たら、いよいよ歯磨きを始めていきますが、その前に口腔ケアをスムーズに行うためのポイントを押さえておきましょう。

①安全な姿勢を確保する

歯磨きをすると、口内へにより刺激で唾液が盛んに分泌されます。

そのため、可能であれば椅子に深く腰掛けてもらい、顎をしっかり引いた状態で行うことで、唾液の誤嚥リスクを抑えます。

高齢者が寝たきりの状態であれば、横向きの体勢をとり、唾液の誤嚥がないように枕を使って顎を引きます。

辛い体勢で行ってしまうと、歯磨きを嫌がる原因になるため、高齢者にとって楽な姿勢を確保してください。

②口腔内をチェックする

歯磨きをする前に、口内炎や歯肉の腫れ、傷、歯の欠損などの有無を確認します。

異常がある場合はかかりつけの歯科医院に相談してください。

③あくまでもサポート

基本はできる限り自力でやってもらうように、介助は仕上げ磨きだけにとどめるなど最小限に抑えます。

と言うのも、歯磨きの動作には手指を動かすリハビリの要素があるからです。

ただし、自力での歯磨きが困難な場合は、介助者が歯磨きを行ってください。

介助磨きをするにあたっては、以上の3つのポイントをしっかり押さえておきましょう。

必要な物品は事前しっかり準備しよう

前項に続いて、歯磨きをスムーズに行うためのポイントには、「物品の事前準備」も挙げられます。

事前準備もせずに歯磨きを始めてしまえば、口腔ケアに無駄な時間がかかってしまい、高齢者が歯磨きそのものを嫌がる原因になります。

使用する物品はあらかじめ準備し、歯磨きを円滑に行えるようにしましょう。

では、歯磨きに使用する主な物品を以下で確認します。

・歯ブラシ
・スポンジブラシ、もしくはガーゼ(上顎や歯茎、舌苔などのケア用品)
・タオル
・使い捨てのプラスチック手袋
・ガーグルベースン、洗面器
・コップ

なお、敏感な口腔内を考慮し、歯ブラシは毛先がやわらかいタイプを用意します。

また、使い込んで毛先が開いたものや不衛生なものは使用せず、新しい歯ブラシに取り換えるようにしてください。

高齢者の嫌がる要素を取り除く!気持ちの良い歯磨きのコツと手順

では、最後に高齢者の歯磨き方法と手順について詳しく見ていきましょう。

まず、歯ブラシはペングリップ(鉛筆の持ち方)で持ち、歯面に軽く当て小刻みに1本1本磨いていきます。

前歯周辺や歯の裏側は敏感な部位なので、奥歯の頬側から磨き始めていくのが良いでしょう。

ゴシゴシと強く磨くと歯の表面や歯肉を傷つけてしまうため、軽快に微振動させて歯垢や汚れを落としていくことがコツです。

また、歯を磨くことに必死になりがちですが、「次はどこを磨くよ」とそのつど優しく声を掛けて表情を見ながら磨いていくと相手の緊張もほぐれるでしょう。

歯磨きの途中、唾液が溜まって辛そうであれば、一度ガーグルベースンに唾液や汚れを吐き出してもらいましょう。

無理して続けると今後の歯磨きを嫌がるようになるため、一旦休憩を入れながら磨いていくようにしてください。

磨き終わったら、最後は必ずねぎらう言葉を掛けます。

次の歯磨きに繋げるようなポジティブな声掛けをすることで、今後の歯磨きも前向きな態度で応えてくれるでしょう。

高齢者の心に寄り添う歯磨きを

高齢者は、特に認知機能が低下している場合、口の中を触られるという行為に強い拒否反応を示します。

嫌がる原因を取り除き、高齢者にとって気持ちの良い歯磨きをすることができれば、その後の歯磨きもポジティブに続けていくことができるでしょう。

まずは、高齢者との意思疎通をゆっくり図り、歯磨きへの抵抗感を減らしていきましょう。

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