歯磨き粉のフッ素で健康な歯を!虫歯予防効果と重要性
歯磨き粉 2019.10.02そもそも歯磨き粉に含まれるフッ素とは?
「虫歯予防」の代名詞でもあるフッ素は、日本国内で流通している歯磨き粉のおよそ90%に配合されており、その効果は歯磨きには欠かすことができません。
そもそも、歯磨き粉に含まれるフッ素とは、厳密に言うと「フッ化物(フッ化ナトリウム)」を指し、フッ素とナトリウムが結びついた化合物です。
フッ素元素は、自然界に他のあらゆる元素と結合することでフッ化物となり、岩や土壌、海水などの身近な自然界に存在しています。
一方で、単体のフッ素自体は、非常に毒性の高い危険な物質ではありますが、私たちの身近な自然界に存在することはありません。
しかし、そのような単体のフッ素が持つ毒性から、安直に「フッ素(フッ化物)=危険」と捉える情報も流布されており、必要以上にフッ素を危険視する声も見られます。
歯磨き粉に含まれる歯科予防のフッ素とは、単体のフッ素とは別物の「フッ化物」であり、「塩素」と「ナトリウム」が結合して「塩化ナトリウム(塩)」になるように、そのものはまるで違うことを理解しておきましょう。
フッ素の詳しい許容摂取量については、改めて後述していきます。
歯磨き粉に配合されたフッ素の虫歯予防効果とは?
では、歯磨き粉に含まれるフッ素には、虫歯予防として具体的にどのような効果があるのでしょうか。
まず、虫歯予防の有効性としては以下のように3つの効果が挙げられます。
①歯の再石灰化を促す
歯の表面のエナメル質は、虫歯菌が作り出した酸に溶かされることで虫歯になりますが、溶け出した物質(カルシウムイオンやリン酸)にフッ素が働きかけることで、歯を修復して元に戻す「再石灰化」現象を促します。
フッ素には、カルシウムイオンやリン酸の反応性を高める効果があります。
②歯質を強化する
エナメル質の酸に対する抵抗力を高め、より強く丈夫にします。
③歯垢から生成される酸を抑制する
プラーク(歯垢)を棲み処とする虫歯菌は、歯に付着することで食べカスから酸を生成します。
フッ素が虫歯菌の活動を阻害することで、酸の生産を抑制します。
以上のような虫歯予防の効果から、フッ素は歯科治療の中でも高い信頼性を持って使われています。
虫歯の予防効果を調査したデータによれば、2~3年の使用で20~30%、長期使用では60%の虫歯抑制率があることも分かっています。
子どもの虫歯予防に活躍するフッ素!虫歯は成長の敵
歯磨き粉に含まれるフッ素の効果は、大人だけでなく、虫歯になりやすい子どもの乳歯にも重要視されています。
と言うのも、子どもの乳歯は、永久歯に比べてエナメル質が薄く、酸に対する抵抗力がありません。
そのため、一旦虫歯になってしまうと進行が早く、広範囲に渡って大きな虫歯ができる傾向があります。
また、子どもの乳歯は永久歯に生え変わりますが、だからといって乳歯の虫歯は楽観視できるものではありません。
その理由としては、虫歯になった乳歯が直下にいる永久歯に悪影響を及ぼしかねないからです。
一つ目は、永久歯の発育不全です。
乳歯の根っこにまで感染した細菌が、直下の永久歯の発育に支障をきたすことで、エナメル質が形成不全を起こす可能性があります。
例えば、白斑や形に歪みが生じるなど様々な影響が見られます。
また、乳歯には永久歯が正しい位置に生えるスペースを確保する役割もあります。
そのため、虫歯によって歯が失われてしまうと、歯抜けの空間に両隣の歯が寄ってきてしまい、永久歯はそれを避けるようにズレた位置に生えてきてしまいます。
その他にも、顎の発育不全につながるリスクがあり、乳歯の虫歯は決して軽視することはできません。
したがって、子どもだからこそ、その成長過程に合わせて、フッ素入り歯磨き粉を効果的に使っていく必要があります。
フッ素入り歯磨き粉の使用量目安はどのくらい?
子どもから大人まで、虫歯予防効果を得るために有効的なフッ素入り歯磨き粉は、過剰に摂取しない限り安全性は高いですが、許容摂取量には注意が必要です。
特に1~3歳の子どもの場合、過量摂取による副作用を起こしやすい傾向があります。
と言うのも、1~3歳の間はぶくぶくうがいが上手くできる年齢ではないため、誤飲が起きやすくなります。
そのため、ペースト状のフッ素入り歯磨き粉は、ぶくぶくうがいができるようになる3~4歳にスタートするのが望ましいでしょう。
では、年齢別にフッ素入り歯磨き粉の使用量目安を確認しておきましょう。
●6か月~2歳:切った爪程度の量(500~1,000ppm)
●3~5歳:5mm以下(500~1,000ppm)
●6~14歳:1cm(1,000ppm)
●15歳以上:1~2cm、約1g(1,000~1,500ppm)
「ppm(ピーピーエム)」とは、フッ素濃度の割合を示す単位で、例えば1000ppmは0.1%となります。
一般的な歯磨き粉のフッ素濃度は、950ppm程度が多いですが、子ども用は100~500ppmとなっています。
なお、フッ素の推定中毒量は、5mg/kg(体重)とされています。
幼児の口腔内に残るフッ素の量は、3~5歳の場合は0.06mgとのデータがあり、つまりこれは1日3回行っても0.12mg程度になるということです。
使用量さえ守れば有害な影響は考えられないので、過剰に心配する必要はないでしょう。
フッ素の効果は歯磨きができてこそ!ブラッシングの時間と質
前項では、歯磨き粉の適切な使用量について詳しくお話してきましたが、フッ素入り歯磨き粉の効果は、適切な使用量に加え、歯磨きがきちんとできてこそ享受することができます。
つまり、いくらフッ素入り歯磨き粉を使っても、いい加減なブラッシングで終わらせてしまっては効果は望めません。
まず、歯磨きに大切なことは、ブラッシングかける時間と質です。
普段習慣的に行っている歯磨きは、泡立ったことで無意識に満足してしまいますが、歯磨きにかける理想的な時間は、最低でも3分間です。
3分間というと、磨いていると意外に長い時間で、ただでさえ忙しい方には余計に長く感じるかもしれません。
しかし、28本の歯の表裏、噛み合わせを1本ずつ丁寧に磨くとなると、最低でも3分間は必要になります。
また、歯磨きを3分以内に済ませる場合、プラークの除去率が大きく下がり、磨き残しが多くなることも分かっています。
歯がしっかり磨けてこその歯磨き粉なので、歯磨きには少なくとも3分間確保するようにしましょう。
歯磨きのタイミングも大切!睡眠中の口内を守るフッ素の効果
フッ素入り歯磨き粉の効果を得るには、歯磨きのタイミングも押さえておくべきポイントです。
歯磨きの理想的な回数は、朝・晩の1日2回と言われていますが、特に大切なのは夕食後、就寝前の歯磨きです。
まず、口内に潤っている唾液には、口内環境を整えるための自浄・抗菌作用が備わっています。
例えば、糖分の多い食事をした後、通常弱酸性である口内は酸性に傾いていますが、唾液はもとの弱酸性に戻そうと働きます。
しかし、身体の機能が休まっている睡眠中は、唾液の分泌量も低下するため、口内は細菌が活発的に活動する温床になります。
そのため、睡眠中の口内は最も虫歯になりやすい環境と言え、就寝前はそれを防ぐための歯磨きになるわけです。
就寝前にフッ素入り歯磨き粉で磨くことができれば、口内にフッ素を残すことで、虫歯菌の活動も抑制することができます。
したがって、朝の歯磨きを忘れても、夕食後、就寝前の歯磨きはできるだけ行うようにしましょう。
歯の健康をフッ素入り歯磨き粉で守ろう
普段使っている歯磨き粉について、あまり深く考える機会はないかもしれません。
しかし、フッ素には歯の再石灰化を促し、虫歯菌の活動を抑える効果があり、私たちの歯を守ってくれています。
近年では、歯磨き粉のフッ素を危険視する声もありますが、使用量を守っている限りは心配する必要はありません。
正しく使い、歯の健康を守っていきましょう。