予防歯科の先進国から学ぶ!スウェーデンの歯磨き方法とは?
虫歯予防 2019.09.07予防歯科先進国スウェーデン!日本と比べる歯科事情
ここ十数年、予防歯科の先進国として世界を牽引するスウェーデンは、予防歯科の意識が国民全体で高いレベルにあり、徹底された歯磨き方法は今や世界のお手本となっています。
一方、日本の歯の健康寿命は決して好ましいとは言えません。
厚生労働省における平成29年度歯科医疾患実態調査によれば、80歳の現存歯数平均は日本が13本、対しスウェーデンが21本と、およそ8本もの差があります。
永久歯は親知らずを除くと28本ですから、日本の場合はその半数しか残っていないということになります。
しかし、スウェーデンでは食事をおいしく味わうにも困らない、実に健康的な本数が維持できているのです。
また、小児歯科に視点を切り替えてみると、6歳でおよそ76%の子どもが虫歯のない口腔環境を保っていることも分かっています。
高齢化・長寿国という共通する社会背景を持つ両国が、なぜこのように大きな開きがあるのでしょうか。
その格差について、次項から詳しく見ていきましょう。
スウェーデン政府による予防歯科への取り組み方法とは?
スウェーデンが予防歯科先進国たる背景には、政府による積極的な取り組みがあったことが関係しています。
もともと、スウェーデンの歯科事情は日本よりも悪く、多くの人が虫歯や歯周病に悩まされていました。
しかし、そんな好ましくない歯の健康事情を打破するために、1970年代、スウェーデン政府は「予防歯科」の重要性に目を向け、歯科医療の国家的な大改革を行います。
「予防歯科」とは、歯が虫歯になってから治療するのではなく、なる前から虫歯を予防していくことです。
スウェーデン政府はこの改革で、国民に対し、歯科医院の「予防歯科」を受診する義務付けをすることで、30年かけて国民全体の意識を変えることに成功しました。
具体的な内容は、国民が定期的に医師から歯科指導を受けながら、自分で日頃からオーラルケア(プラークコントロール)を実践していくというものです。
それに加え、20歳以下の国民は、歯科医院での受診料が無料ということもあり、スウェーデンでは子どもの頃から歯への健康意識が根付くようになっているのです。
現在、日本でも予防歯科の重要性は大きく謳われているものの、多忙な現代社会では、歯が痛くなってから歯科医院で治療することがほとんどです。
また、「予防歯科への理解度」について両国でアンケート調査を行ったところ、スウェーデンでは60%であるのに対し、日本では21%と、大きくかけ離れた結果が出ています。
このことから、私たち日本人は、単にスウェーデンの歯磨き方法を真似るだけでなく、予防歯科という考えから意識を改革していくことが重要と言えます。
子どもに歯磨きを習慣づける方法とは?スウェーデンから学ぶ
スウェーデンが予防歯科先進国になりえたことは、実に30年以上に及ぶ予防歯科プロジェクトの賜物と言えます。
では、スウェーデンでは具体的にどのような歯の健康づくりを行っているのでしょうか。
まず、子どもに歯磨きを習慣づける方法として用いられる合言葉は、「2+2+2+2」です。
「2+2+2+2」という不思議な言葉は、歯磨きをより効果的にする以下の取り組みから用いられています。
・歯磨きは1日2回朝晩
・歯磨き粉は2cm
・歯磨き時間は2分間
・歯磨き後2時間は飲食をしない
これらをそれぞれプラスすることで、子どもの頃から徹底したオーラルケアを習慣づけていきます。
また、スウェーデンでは、歯が生え始めた乳児から歯科医院での検診が義務付けられているため、「歯科医院は当たり前の習慣」というごく身近な存在として位置づいています。
このような「歯医者=怖い」という印象になりづらい点も、オーラルケアの積極的な取り組みに繋がっています。
歯科予防に重要なプラークコントロールの役割
前項では、子どもに歯磨きを習慣づけるための方法を、スウェーデンスタイルから見てきました。
では次に、歯科予防において重要となる、日常的なプラークコントロールの意味について詳しく見ていきましょう。
まず、プラークコントロールとは、歯垢(プラーク)を除去することを意味します。
そもそも虫歯は、細菌のかたまりであるプラークが口内に放置されることで発生します。
仕組みとしては、まず、口内の常在菌であるミュータンス菌(虫歯菌)が、食べカスに含まれた糖分を栄養源にプラークとなって増殖していきます。
虫歯菌が野放しにされると、その棲み処であるプラークに酸が発生し、歯の表面を次第に溶かして虫歯をつくっていくのです。
つまり、虫歯を防ぐためには、食後の食べカスやプラークを確実に取り除く歯磨きが第一ということです。
また、自浄・抗菌作用を持つ唾液が減少する睡眠中は、虫歯菌が活発に動くには絶好の時間帯です。
そのため、特に夜の食後、もしくは就寝前は、徹底した歯磨きをすることで虫歯を防ぐことができます。
歯磨きだけでは足りない!補助道具をプラスした方法を
プラークコントロールの意味や役割が分かったところで、次にスウェーデンで実践されている歯磨き方法について詳しくお話していきましょう。
日常的なオーラルケアの取り組みを考えたとき、日本では歯磨きだけで済ませている人が多い一方で、スウェーデンでは、およそ半数以上の人がデンタルフロスなどのオーラル用品を併用しているとのデータが出ています。
実際、歯磨きだけでは全体の6割ほどしか磨けず、特に歯と歯の間は歯ブラシが届かない虫歯になりやすい場所です。
したがって、より効果的なオーラルケアを実現させるには、歯磨きだけではなく、歯磨き後に補助道具をプラスすることが求められます。
補助道具には様々な種類がありますが、扱いやすくおすすめできるものは「デンタルフロス」です。
デンタルフロスは、Y字型のホルダータイプの糸ようじで、歯と歯の間に通してプラークを除去します。
頑固に通してしまうと歯肉を傷めてしまうため、使用するときは力加減に注意することがポイントです。
また、奥歯の溝も磨き残しが出やすく、虫歯になりやすい場所ですが、毛先が細い「スポットブラシ」を用いることで、磨き残しをカバーすることができます。
このようなお掃除補助グッズを習慣的にプラスすることができれば、虫歯になりにくい、健康的な歯を生涯維持することができるでしょう。
毎日の歯磨きを定期検診で補完!歯科医院でアドバイスをもらおう
前項では、スウェーデン式の予防歯科から、デンタルフロスなどの補助道具を使った歯磨き方法についてお話ししてきました。
セルフによる習慣的なオーラルケアは、予防歯科の前提とも言えるべきものですが、スウェーデンの取り組みでもあるように、大人になってからも定期的な歯科検診を受診することで、より効果的な虫歯予防を望むことができます。
例えば、毎日しっかり歯磨きをしていても、実際自分の歯磨きがどの程度磨けているのか、どのくらいプラークが残っているのか、自分では知ることができません。
そこで、定期的に歯科検診を受けることで、磨き足りない箇所を確実に知ることができ、その後の歯磨きに繋げていくことができます。
また、知らないうちにできてしまった虫歯も、早期に治療することができるため、定期的な検診はコスパ的にも良いと言えます。
歯科医院で推奨されている定期検診は、3か月に1度ですが、少なくとも半年に1度は受診する習慣をつけることがおすすめです。
スウェーデンを真似て健康な歯を
スウェーデンが取り組む国民全体での歯科予防は、日本を含めた多くの国を感化しています。
近年、日本でも歯の健康と虫歯予防が大きく注目を浴び、積極的に定期検診を受ける方も増えてきています。
検診を習慣づけ、自宅でのセルフケアを見直すことができれば、生涯健康な歯を保つことができるでしょう。