歯磨きだけでは予防できない歯石!歯石が取れた跡に穴が空く

虫歯予防 2019.06.13

歯垢、歯石が口腔内環境を悪化させる事について、「聞いたことある!」という方も少なくないでしょう。

歯垢だけなら歯磨きにより除去する事が可能ですが、プラーク(歯垢)から歯石になってしまうと厄介です。

口腔内のケアをせず、固まった歯石が取れた時、歯に穴が空いたような感触で驚かれる方もいらっしゃいます。

その場合、歯科衛生士による除去治療が必要です。

そんな歯磨きでは除去できない歯石の種類、原因、症状、予防方法についてご紹介します。

歯垢の石灰化した歯石とは?歯に穴が開く?

歯垢は爪でこそぎ落せ、取れたプラークを見ると黄白色でネバネバしています。

この歯垢を除去せずに放置、また歯並びが悪く磨き残しが有ると、歯垢と唾液中のカルシウム等が結合します。

やがて、石灰化を経て歯に沈着、歯ブラシだけでは除去できない歯石となります。

しばらく歯を磨かずにいて、舌の先で歯の表面、裏をなぞるとザラザラしますが、これは歯垢が付着し始めた兆候になります。

この兆候が出た時、速やかに歯磨き等により歯垢の除去をしないと、数日後に石灰化が始まり、歯石という塊になってしまいます。

更に放って置くと、ザラザラした歯石の表面に再度歯垢が付き、新たに歯石の層ができる等、悪循環となるのです。

そして、何層にも重なった歯石の層が歯磨き中に取れた時、歯の裏側に穴が空いて歯が欠けたと勘違いする時もあります。

唾液の出口が舌の下にあることから、歯石のできやすい場所として前歯の下裏側が注意していても歯石が付きやすい場所になります。

深くなる歯周ポケットの穴!歯茎の上と下にできる歯石の種類

歯石には2種類あり、歯肉縁より上にできる歯石を【歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)】、歯肉縁より下にできるものを【歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)】といいます。

まず歯肉縁上歯石は、歯と歯茎の境目に付着し、基本的には歯垢が唾液と混ざって固まるので、白っぽい色、もしくは黄色っぽい色をしています。

歯肉縁上歯石、歯肉縁下歯石どちらも歯垢が石灰化したものです。

歯磨きの時自然に歯石が取れる時があります。

その取れた歯石を、歯が取れたと感じ、歯に穴が空いたと錯覚する症状を歯肉縁上歯石と言います。

そして歯肉縁上歯石の除去はスケーラーという器具で、歯科衛生士等の手により比較的簡単に除去してもらうことが可能です。

次に歯肉縁下歯石ですが、歯茎歯周ポケット内の歯根部にできます。

歯周ポケット内の炎症により、歯茎から出血した血液と混ざって固まることが多いので赤黒、黒褐色の歯石ができます。

また、血液のヘモグロビンを含み、歯の表面へ堅固に付着するので歯肉縁上歯石より除去する事が困難です。

そして、歯肉縁下歯石は歯茎を剥がして除去する必要があり、麻酔を使用しての施術になります。

どんどん深くなる歯周ポケットの治療をせずにいると、土台である歯槽骨まで侵し歯がグラグラになって歯根から丸ごと抜ける事になります。

除去せずにいた歯石が自然に取れた!

歯垢の残滓が原因でできる歯石ですが、歯石自体、歯茎に直接影響を与える事はありません。

しかし、歯石の表面には小さな穴が空いており、除去せずにいると小さな穴に細菌が入り込み増殖、発生した毒素を歯周ポケットに排出します。

そして、歯周ポケットに入り込んだ毒素が、歯茎の腫れ等を引き起こす事により歯周病や、虫歯を作る原因になります。

ザラザラした歯石の表面には歯垢が付着しやすく、放置されたプラークが歯石になっていく、という繰り返しの悪循環になり幾重にも層ができてしまいます。

すると歯磨き中、口中に違和感を覚え、歯が取れたと思って確認したら、放って置いた歯石の層から剥がれた一部分だったという事もあります。

また、歯が重なっていて磨きづらい場所、奥歯の裏等のブラシが届かない所は歯垢が落ちにくく、磨き残しの歯垢が歯石の原因になるので注意が必要です。

このように歯石が層になってきてしまうと、除去する事も大変手間がかかり、何より歯周病になる一番の原因になります。

目標は歯垢が取れた歯!綺麗な歯を保って病気の発症を防ぐ

歯垢が取れた白いツルツルの歯は、歯石が付着する事もなく見た目もきれいで、清潔感があります。

そして、見た目、清潔感以上にプラークコントロール(歯垢除去)ができていれば、歯周病発症等による健康に及ぼす悪影響を防ぐことに繋がります。

まず歯周病の主な症状は、

・歯周病菌による歯茎からの出血
・口臭がきつくなる
・歯茎がブヨブヨになり歯が抜ける

等になります。

この歯周病菌は「歯周病原生細菌」といい、虫歯菌のように歯に穴を空けたりはしませんが、歯周組織に炎症を起こします。

「歯周病原生細菌」により炎症を起こし、深くなった歯周ポケットの歯茎から産出される「サイトカイン」と呼ばれる物質が血管から身体内に流入します。

そして、この深くなった歯周ポケットから流入したサイトカインが、心臓冠状動脈内へ血管沈着物(アテローム性プラーク)の形成を速め、心筋梗塞や狭心症の発症率を高める場合があります。

このように歯周病を発症させる歯周病菌は、生死にかかわるような症状を引き起こす可能性の否定はできないのです。

ある病が歯周ポケットの穴を大きくする

厚生労働省の発表によると平成26年度の糖尿病患者数は316万6000人で、予備軍までカウントすると1000万人と言われています。

その糖尿病の合併症(網膜症・腎症・神経症・末梢血管障害・大血管障害)の一つに歯周病も入っていますので、その影響についてご紹介します。

歯石が綺麗に取れた歯茎には発症しない歯周病ですが、糖尿病患者の中には歯周病発症した例があるのです。

重度の歯周病は歯周ポケットの穴を大きくし、歯周ポケットから発生した「歯周病原生細菌」により、歯茎が炎症を起こします。

その炎症した歯茎からサイトカインが大量に発生、血流にのって身体中に入り込んでいきます。

そして、食事後の血糖値を下げるインスリンの効果を妨げインスリン抵抗性、血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病の妨げになるのです。

また、高齢者に多くみられる「誤嚥性肺炎」は、「歯周病原生細菌」を含んだ唾液を誤嚥し気管に入り込み、肺に感染します。

特に、要介護の高齢者は「誤嚥性肺炎」を起こしやすいのですが、歯垢が綺麗に取れた口腔内環境にすると、「歯周病原性細菌」の数が減少し肺炎の発生率抑制につながります。

歯垢や歯石が取れた取れないに関係しない?妊婦特有の歯周病

一般的に、歯周病発症はプラークが歯石になり、歯石が幾層にもなる程症状が悪化、歯茎の炎症を起こします。

ところが、口腔ケアもしっかりできて、歯垢が綺麗に取れた歯であるにもかかわらず、妊娠したことをきっかけに歯周病になり重大な影響が出る事があります。

出産前、歯に穴が空いた虫歯の治療も大切ですが、妊娠によるホルモンバランスの崩れが原因で歯茎に炎症を起こしやすくなり、多少の歯周病リスクが生じるのです。

そして、歯周病が発症しサイトカインが血流により子宮に運ばれ、子宮筋の収縮を促し早産・低体重児出産の可能性が高まります。

このように口腔内のケアをしっかりしていても体内ホルモンバランスが崩れる影響で歯周病になる場合もあります。

歯石は全身の健康に影響する

歯垢、歯石がもたらす負の要因について、口腔内に限らず身体全体にまで及ぼす可能性があります。

口腔内のケアを疎かにし、炎症した歯茎から発生したサイトカインが原因で、「心筋梗塞」等の発症率を高める等その影響力を見過ごすことはできません。

また、ホルモンバランスが崩れ、歯茎の炎症から歯周病になる等歯垢、歯石とは関係なく発症する事もあります。

たかが歯垢、歯石等と見過ごさず、日頃のケアはもちろん、歯科医院による検診を受ける事もケアの一環です。

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