高齢者に歯磨きをさせる方法とは?高齢者看護に学ぶ自宅介護
歯磨き 2020.02.18高齢者看護の歯磨きとは?
高齢者看護の基本は、「高齢者に合わせた健康管理」をすることです。
高齢になると、体力や気力が衰え、自分の身の回りのことさえままならなくなります。
それに加え、認知機能が低下すると、今までできていたことが、できなくなってしまうこともあるでしょう。
本人ももどかしいでしょうが、介護をする家族にとってもサポートするのが大変になります。
「高齢者に合わせた健康管理」をするには、加齢に応じた生活環境や活動の整備をすることが大切です。
「なぜできないのか」ではなく、「どうすればできるか」を考えるようにしましょう。
担当の医師や看護師の手を借りながら、自宅で介護をする場合、日常のケアで大切なことは、「栄養」「排泄」「清潔」をサポートし、より良い健康状態を維持していくことです。
そして、栄養をしっかり取るには、口腔ケアをすることが重要で、それには歯磨きは欠かせません。
今は高齢者が自分で歯磨きをしていても、いずれ自分では思うようにできなくなります。
そのときには、家族が仕上げ磨きをする、あるいは歯磨き自体を代わりにすることになるでしょう。
また、健康上に問題のあるときは、寝たまましなければならないこともあります。
では、看護が必要な高齢者にはどのような方法で歯磨きをしたら良いのでしょうか。
高齢者の口腔内は問題がいっぱい!高齢者看護での歯磨きの重要性
高齢者になると、体にさまざまな変化が起きますが、口腔内も同じように変化が起きています。
歯磨きの方法の前に、高齢者看護をする場合、口腔内にどのような変化が起きる可能性があるのか知っておきましょう。
【唾液分泌の低下】
唾液には粘膜についた細菌や汚れを洗い流す「自浄作用」があります。
唾液が多く分泌されると、それだけ口のなかが清潔に保たれることになります。
しかし、体の機能が衰えると、唾液の分泌量も減ってきます。
そのため、高齢者になると細菌が増え、虫歯や口臭、ドライマウスなど、口腔内のトラブルを起こしやすくなるのです。
【味覚の低下】
唾液の分泌が低下することで、「舌苔(ぜったい)」が舌の表面に汚れ溜まり、苔のように見えてしまうことがあります。
舌の表面には「味蕾(みらい)」という味を感じる器官があり、そこに舌苔がつくと味が感じにくくなり、悪化すると味覚障害を引き起こしてしまいます。
味覚を感じにくくなると、食事を摂ることが楽しくなくなってしまったり、偏った食事になってしまったりするので、栄養面に問題がでてしまいます。
高齢者看護するうえで知っておくべき口腔内トラブル
引き続き、高齢者の口腔内トラブルについて見ていきましょう。
【脳機能の低下】
食べ物を噛んで食べるときには、口を開けたり閉じたりしなければなりません。
また、食べることで味覚を感じ、酸素も自然に身体の中に取り込むことができます。
これが上手くできなくなると、脳に刺激が与えられなくなり、脳機能の低下に繋がる可能性が高くなります。
【嚥下機能の低下】
高齢者になると、食べ物を飲み込む力「嚥下(えんげ)」が低下します。
嚥下機能が低下すると、唾液や食べ物を飲み込むときに、間違って気管に入ってしまうことがあります。
このとき、口腔内の細菌が唾液や食べ物と一緒に肺に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいますが、誤嚥をすることで、命に関わるようなトラブルに発展する可能性があります。
【口腔機能の低下】
口腔は、飲食するだけでなく、呼吸をする、話す、表情を作るなど、口を使う場合に重要な役割を持っています。
高齢者になると表情が乏しくなるといわれますが、口腔機能が低下すると表情にも影響が出ます。
高齢者になると、このようなことが起こりやすくなるので、高齢者看護するときには、歯磨きを正しい方法で行い、口腔トラブルを少しでも減らす必要があります。
高齢者看護で重要な歯磨きの方法で得られる効果
このように、口の中が清潔に保たれていないと、口腔内トラブルに発展してしまう可能性があります。
高齢者看護するとき、歯磨きで得られる大きな効果のひとつが「唾液分泌の促進」です。
これは、歯磨きの方法によって、唾液の分泌を促すことができる、というものです。
歯磨きによって「唾液腺」が刺激されると、唾液の分泌が促され、自然に口腔内を清潔に保てるようになります。
口腔内が清潔に保たれると、虫歯や口臭、ドライマウスをおさえられます。
また、唾液が分泌されることで、口腔内の「黄色ブドウ球菌」や「クレブシエラ・ニューモニエ」などの細菌の繁殖を防ぎ、誤嚥によるトラブルも防げます。
舌苔もできにくくなるので、食事も味わいながら楽しめるようになるでしょう。
味を確認しながらしっかり噛むことで、栄養を吸収しやすくなり、免疫力もアップし、脳へも刺激を与えることになります。
自分の歯でしっかり食事を味わうには、歯磨きをはじめとした口腔ケアがいかに重要かが、お分かりいただけたでしょう。
次は、具体的な口腔ケア方法についてご紹介します。
高齢者看護「基本の歯磨き方法」
高齢者看護するときは、その人に合わせた「声掛け」と「本人の意思を尊重」することが大切です。
これから何をするのか声を掛け、本人の習慣に合わせ、できるだけ自分でやってもらうようにしてください。
また、道具を工夫のも、歯磨きをしやすくする方法のひとつです。
柄が太くなった歯ブラシを使うと、高齢者でも持ちやすくしっかり磨けます。
仕上げ磨きが必要な場合には、口腔内で動かしやすい、ヘッドの小さい子ども用の歯ブラシなどで行うと良いでしょう。
すべて介助が必要な人は、できるだけ座った状態に近い姿勢であごが上がらないようにして、頭を固定します。
唾液の誤嚥に注意しながら行いましょう。
唾液を取り除く、吸引器があると便利です。
仕上げ磨きや歯磨き介助をするときは、えんぴつを持つように歯ブラシを持ちます。
この持ち方ですと、角度を変えやすく、力のコントロールもしやすいというメリットがあります。
歯磨き粉は大豆1粒ほどの少量を取って使うか、液体歯磨きを使うと良いでしょう。
唾液腺は、耳の下の「耳下腺」やあごの「舌下腺」などがあります。
奥歯を磨くと、自然に耳下腺のあたりを刺激することになるので、無理に唾液腺を刺激しようとしなくても大丈夫です。
歯磨きだけで足りない場合は、顔を両手で挟み、奥歯の辺りを前に向かってなでるようにマッサージしてください。
高齢者看護の歯磨き方法「自分で磨けない場合」
なかなか自分で歯を磨けないという高齢者の場合には、次のような方法で歯磨きを行いましょう。
①誤嚥を起こさないような姿勢を保ちます。
起き上がれる場合は座った状態に近い体勢で、起き上がれない場合は横を向いてもらいましょう。
②口腔ケア用のスポンジブラシに、液体歯磨きをつけ、歯と口腔内をやさしくこすり、食べかすなどを取り除きます。
③舌専用ブラシを使って、奥から手前に舌の表面をこすり、舌の汚れを取ります。
④液体歯磨きをつけた歯ブラシ(または電動歯ブラシ)で歯を磨きます。
⑤うがいをして終了です。
うがいには水でも良いのですが、より清潔に保ちたい場合はうがい液を使うと良いでしょう。
歯磨きが上手くできない場合は、歯磨きシートを使って口腔ケアすることをおすすめします。
使い捨ての歯磨きシートが市販されているので、このシートを使って歯や口腔内の汚れを拭き取れば、歯磨きやうがいによる誤嚥を防げます。
また、使い捨てなので、衛生面も心配いりません。
この他にも粘膜専用の粘膜ブラシや、細かい部分が磨きやすいワンタフトブラシ、歯間ブラシなどを使い、その人に合わせた高齢者看護で、歯磨きをしてください。
高齢者介護の歯磨きはトラブルに気をつけて行おう
高齢者になると、唾液の分泌が減ってきてしまうので、口腔トラブルを起こしやすくなります。
歯磨きをすると、歯の汚れも落とせ、自然に唾液腺が刺激されます。
高齢者看護は本人の意思を尊重することが大事なので、歯磨きができるうちは本人にやってもらいましょう。
自分では歯磨きが上手くできなくなった場合は、家族が仕上げ磨きをするか、歯磨きシートなどを使って口腔内を清潔に保つよう心掛けてください。