差し歯の膿を放置しているとどうなるの?症状と対処法とは!
歯科矯正 2019.08.14差し歯に膿がたまる原因
差し歯は人工の被せ物を差し込んで、虫歯などで失った歯を再現していますが、差し歯の根元は残存しているご自身の歯を利用しています。
通常、人の歯の根元には歯の神経が通っている神経管というものが存在します。
この神経管は本来無菌の場所ですが、ひどい虫歯の場合、歯の神経まで虫歯菌に侵されてしまい、神経管の無菌状態が破られることがあります。
また、歯の神経管に細菌が侵入する原因は、虫歯の進行だけではありません。
例えば、初めて差し歯治療をした際、本来無菌である神経管に唾液を介して口の中の細菌が入ってしまうことがあります。
また、歯科医師が神経管に細菌が入らないように丁寧に治療をしたとしても、質の悪い被せ物をした場合、歯と被せ物の間から口の中の細菌が侵入してしまうこともあります。
これらの原因で一度神経管に入った細菌は、何らかの原因で増殖することがあります。
神経管がある歯の根の部分で細菌が増殖すると、白血球をはじめとする身体の免疫機能が活発化して細菌を除去しようとします。
膿は身体の中で免疫が細菌と戦って出来た残骸であり、差し歯の膿は何らかの原因で細菌が増殖した際に溜まる可能性があると考えられています。
そして差し歯の膿は、放置していると身体に様々な症状を引き起こしてしまいます。
差し歯の膿を放置した際におこる症状とは
差し歯の膿は、神経管のある歯の根の部分に溜まることが多いですが、膿の逃げ場が無くなると歯茎が腫れてくることがあります。
また、歯茎まで膿が広がると、歯茎の一部分にニキビのような膨らみが出来ることもあります。
さらに膿がたまり続けると、歯茎に小さな穴が開いて、穴から膿が漏れ出してしまい、口臭の原因となる可能性もあります。
また通常、差し歯にする際は歯の神経を抜いているため、歯に痛みが生じることはありません。
しかし、歯の根に膿が溜まってしまうと歯の根の先端に膿の袋が出来てしまい、食べ物を噛んだ時などに、膿の袋の内圧が高まることで痛みを感じることがあります。
また、内圧が変化することで「歯が浮いた感じがする」といった症状を訴える方もいます。
これらの症状だけでも、差し歯の膿を放置する危険性が少しお分かりいただけたのではないかと思いますが、差し歯の膿を放置してはいけなのはこれらの症状に苦しむからだけはありません。
なぜ差し歯の膿を放置してはいけないのか
ここまで、差し歯の膿は歯の根の部分にたまることをご説明してきました。
そもそも歯の根の部分に膿がたまっている時点で、多くの場合、根尖性歯周炎という歯の根
の部分とその周囲に炎症が起きている状態を引き起こしている可能性が高いです。
もし、差し歯の膿を治療せずに放置していると、炎症が顎の骨にまで広がり、顎の骨が溶け
てしまうことがあります。
また、炎症が顎まで広がることで、顔がパンパンに腫れてしまう可能性もあります。
さらに、特に差し歯が上の歯に位置している場合、歯の膿が副鼻腔にまで広がり、蓄膿症を
発症することがあります。
蓄膿症になると、鼻から嫌な匂いががしたり、黄色くドロドロをした鼻水が出るようになり
ます。
また、歯の根に出来た膿の袋が大きくなると、抜歯をしなくてはいけなくなる可能性が高い
です。
抜歯をすれば、再度差し歯にすることは出来ないので、インプラントに移行するか、歯が抜け
たまま過ごさなくてはいけなくなり、容姿にも影響する可能性があります。
このように、差し歯の膿を放置してしまうと、口の中や口の周囲に様々な深刻な事態を招く可能性があります。
しかし、深刻な事態が起きるのは口や口の周囲だけではありません。
差し歯の膿を放置することで全身に起こる問題
歯は身体の中でも小さな組織の一部ですが、歯のトラブルがもたらす身体への影響はとても大きく、深刻化する可能性があります。
例えば、歯のトラブルがもたらす身体への影響の一つが「感染性心内膜炎」です。
その名の通り、この病気は心臓の内膜に感染が起こってしまう病気です。
生まれつき心臓に病気がある方や心臓の弁が人工弁である方などが特に罹りやすいと考えられています。
「なぜ歯から心臓に感染が起こるの?」と疑問を抱かれるかもしれませんが、歯の中で増殖した細菌は血流にのって全身に運ばれてしまいます。
そのため、心臓だけではなく、全身の中でも特に脆弱な箇所に感染してしまう可能性があります。
これらのことから、たかが差し歯の膿でも放置をしていると、深刻な事態を招く可能性があるので注意が必要です。
差し歯に膿が溜まった時の対処法とは
一般的には、まず差し歯の被せ物を外して、歯の根の先にはる膿の袋に穴を開けて、溜まった膿を排出します。
そして、細菌が繁殖した場所を専用の器具で掃除、洗浄をしていきます。
掃除・洗浄した後には、お薬を使って歯の根を消毒して、歯の根内部を無菌化していき最後にお薬を詰めてフタをして再度被せ物をします。
このような治療を行っても状態が改善しない場合、また差し歯の膿を放置して歯の根の先に出来た袋が大きい場合には、歯の根を切断して、歯の根の先に出来た袋を取り出す外科的な治療(歯根端切除術)を行う必要があります。
差し歯に溜まった膿を治療するのは難易度が高い場合も多く、これらの治療を行っても症状が改善しない場合は抜歯しなくてはいけないこともあります。
また、治療をしては悪くなるということを繰り返す場合もあるので、根気のいる治療になります。
差し歯に膿が溜まらないようにするには
差し歯の中に入り込んでしまった細菌は、特に疲れが溜まっているとき、風邪などで免疫が落ちているときに元気になり、急速に増殖することがあります。
そのため、特に痛みがない場合でも、仕事やプライベートでお疲れのときや風邪などの後に差し歯が浮いた感じがする場合には特に注意が必要です。
差し歯に膿が溜まらないようにするためだけではなく、風邪などの感染症にかからないようにするためにも、普段から疲れを溜めないようにして免疫を高めておくことが大切です。
また差し歯の治療は、最初の治療、つまり差し歯を作る際に細菌を入れないことが肝心です。
差し歯にする際には、丁寧に治療をしてくれる歯医者、歯の根の治療を専門としている歯医者を選ぶことが大切です。
最近は、より清潔な治療、細かい治療が適切に出来るように、自由診療で歯の根の治療を専門的に行っている歯医者もあるので、よく情報収集して病院を選択するようにしましょう。
また、もし差し歯の膿が溜まっても放置しないことが何よりも大切です。
早期発見、早期治療の大切さ
これまでご説明してきた通り、差し歯の膿は放置せずに早期に治療を行えば、インプラントを回避できる可能性もあり、治療費も抑えることが出来ます。
また現在、日本人の歯科検診受診率は諸外国と比べ低いですが、症状がなくても定期的に歯科検診を受けることで差し歯のトラブルの早期発見・早期治療につながります。
これから差し歯になれる方、既に差し歯にされている方はこの先末長くその差し歯を使えるように、歯是非定期的に歯科検診を受診することを検討してみてくださいね。