【介護予防】高齢者への歯磨き指導は何からはじめるべき?
歯磨き 2019.11.16高齢者に歯磨き指導が必要な理由
誰かに歯磨きの指導を行うのは、簡単なことではありません。
歯磨きは毎日何度も行うことですし、うまく磨けているか確認するのも難しいでしょう。
高齢者に丁寧な指導をしても、時間が経つと忘れてしまって、大ざっぱに磨くだけで済ませてしまうこともあると思います。
歯の健康は、高齢者がいきいきと暮らすうえで重要なことですから、根気強く指導していきましょう。
高齢者の口の中は、口腔ケアしにくい状態になっていることも多く、若い頃と同じような歯磨き方法では対処できないものです。
では、どのような注意点が考えられるでしょうか。
●歯の根が露出する部分が増える
歯肉のすり減り、退縮などによって、歯の根の露出が進みます。
深く細かく磨くようにしないと、歯の根に虫歯ができてしまうでしょう。
●自浄作用が低下している
自浄作用とは、自分の唾液によって口腔内の汚れ・細菌を洗い流す作用のことです。
年齢を重ねて体の機能が衰えてくると、唾液の分泌量が徐々に減っていき、自浄作用が低下していきます。
若い頃よりもこまめに磨くようにしないと、すぐに細菌が繁殖してしまうのです。
自浄作用とともに免疫力が低下していることもあるので、トラブルなどが起きやすく、それが長く続いてしまうことも多いようです。
歯磨き指導の前に!高齢者ならではの注意点を理解
●治した跡や入れ歯がある
高齢者の口の中に詰め物、入れ歯などがあると、隙間に細菌が繁殖しやすくなるので、入念にケアする必要があります。
詰め物の下で虫歯が進行していることもあるので、定期的に歯科医院へ行き、指導してもらうことが望ましいでしょう。
●味覚が変わっていく
舌に舌苔が付着することで、味に鈍感になることがありますし、味覚の変化が起こることがあります。
食事が楽しくなくなり、栄養を吸収できない状態になると、亜鉛不足によって味覚の変化が起こることもあるでしょう。
●入れ歯が合わなくなる
歯肉に変化が起きると、入れ歯が合わなくなってくることも多いです。
入れ歯はすり減って劣化していくので、定期的に状態を確認しなければいけません。
合わなくなると食事しにくくなったり、口の中に当たって傷付いたりしますので、入れ歯についての歯磨き指導を行うことも重要です。
高齢者に歯磨き指導を行うことで得られるメリット
高齢者に適切な口腔ケアを実践してもらうことは、運動機能の向上にもつながると言われています。
美味しい食事がとれるだけでなく、栄養を十分に摂取できる、心が安定するなどのメリットもあるでしょう。
自分で歯磨きができる高齢者なら、歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスなどで口の中をある程度キレイに保つことができますが、それだけでは十分とは言えません。
歯科医院で専門家に診てもらい、指導してもらうことが大切です。
セルフケアと専門家によるケアを両方行うことで、虫歯予防以外にどのようなメリットがあるのかご紹介します。
◎唾液の量が増える可能性が高い
歯ブラシで唾液腺が刺激されて、唾液の量が増えることもあります。
唾液が増えれば自浄作用が高まり、味覚が正常な状態になり、口の中を清潔な状態に保ちやすくなるでしょう。
◎脳が活性化する
食事を楽しめるようになり、よく噛んで食べる機会が増えれば、脳に刺激が伝わって活性化すると言われています。
介護予防にもつながるでしょう。
◎誤嚥を防ぐ
食べ物が間違って気管に入ってしまうことを誤嚥と言います。
気管に異物が入ると苦しいですし、食物と一緒に細菌が入ってしまうこともあるので、口腔ケアによって「飲み込む力」を維持することは大切です。
高齢者への歯磨き指導の流れ
実際に高齢者に歯磨き指導を行う際に、どのような流れで進めていくかご説明します。
まず、高齢者の口の中の状態を把握することが望ましいでしょう。
やはり、最初は歯科医院で指導を受けることをおすすめします。
介護に携わる方でも高齢者の口腔ケアを行う際に、
・歯や歯茎
・におい
・食べこぼしの量
・食べる量
・食後の声の変化
・食事中にむせる
などを見て異変に気が付くこともありますので、口の中や食事の様子など、日々チェックするといいでしょう。
そして、歯磨きやその他の口腔ケアについてですが、基本的には「自分でできることは自分でやってもらう」という点に留意して指導を行うようにします。
自分で歯磨きができるなら、「握りやすい形」のものを選びましょう。
スポンジブラシや舌ブラシ、フロスなど、「優しく磨ける」「細かく磨ける」グッズもおすすめです。
歯磨き方法については、歯を一つ一つ丁寧に、いろいろな角度から磨き、隙間の汚れも落とすという基本的なことに注意すればいいでしょう。
歯の裏や、口の奥など磨きにくいところも磨くように指導することが大事です。
歯が抜けていて、歯と歯の間に広い隙間が空いている場合は、歯ブラシを隙間の横から入れるようにして、歯のすべての面を磨くようにします。
ただ、体が思うように動かせない高齢者も多いので、必要であれば仕上げ磨きを行ってください。
細かい口腔ケアについても指導
部分入れ歯、総入れ歯、ブリッジなどについては、より細かいケアが必要です。
ブリッジは、歯磨きする際に、歯間ブラシやフロスで細かい部分まできれいにしなければいけません。
また、部分入れ歯なら、それを取り外して義歯用ブラシで金属のバネを磨き、義歯洗浄剤で清潔に保ちます。
総入れ歯も義歯用ブラシですみずみまで磨き、義歯洗浄剤で汚れを落としてください。
どちらも、落とさないように注意が必要です。
入れ歯を外した際に、残っている歯の一本一本を細かく磨くようにしましょう。
そして、高齢者の口腔ケアにおいては、歯磨き以外にも指導されていることがあります。
それは体操とマッサージです。
歯、舌、頬の筋肉を元気な状態に保つために、これらの「機能的口腔ケア」を行うことも必要でしょう。
次項でくわしくお伝えします。
高齢者におすすめの体操・マッサージで口腔ケア
歯磨きだけでなく体操やマッサージの指導を行うことも、高齢者の口の健康を守るために役立つと言われています。
〈おすすめの体操〉
体操を行う前と、行った後に深呼吸をすることでリラックス効果があります。
●舌体操
口を大きく開き、舌をつき出して上下左右に動かしたり、出し入れを繰り返したりする体操です。
舌を出したまま、ぐるぐると回すような動きも取り入れましょう。
●頬の膨らまし体操
口を閉じた状態で、頬をぷくっと膨らませたり、キュッとへこませたりする体操です。
●唇体操
声を出さずに、口を「あ」「い」「う」「お」、それぞれの形に大きく動かす体操です。
〈マッサージ〉
頬や顎、唇のあたりを軽くマッサージすることで、唾液腺のはたらきが活発になると言われています。
下唇・上唇それぞれをつまんで伸ばすマッサージや、頬の上を円を描くように優しくマッサージするといいでしょう。
こめかみや耳の下、顎のまわりのマッサージもおすすめです。
まずは口腔内の状態を知ることが重要
高齢者に適切な歯磨き指導を行うためには、その方の口の中の状態を正しく把握する必要があります。
したがって、歯科関係者とともに口腔ケアを行うことが望まれます。
丁寧な指導を継続して行うことで、「食べる力」を取り戻し、必要な栄養が摂れるようになれば介護予防にも効果的だと言えるでしょう。